【レビュー】ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー

ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー

レビュー

マリオワールドの縦の広がり

2023年の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』から3年、ついに続編が劇場にやってきました。前作はピーチ・マリオ・ルイージ・キノピオ・クッパといういわゆる「マリオシリーズの基本セット」で物語を回していましたが、本作はそこに**ヨッシー・ロゼッタ・チコ・クッパJr.**が一気に合流して、画面の中のマリオワールドが縦にぐっと広がった印象でした。

個人的に、原作の『スーパーマリオギャラクシー』(Wii、2007)は未プレイなので、ロゼッタとチコの細かい人物像は知らずに本作に臨んでいます。ただ、スマブラでロゼッタ&チコを好んで使っていた経験があるので、能力面の手触りはなんとなく頭に入っていて、銀河の方からやって来た姉御肌のキャラ、という入り方で違和感なく入っていけたかなと思います。

そのうえで、ヨッシーの描き方がとにかく楽しい。破天荒というかトラブルメーカーというか、やんちゃなペットがそのまま冒険に同行してきた感じで、画面の温度を一段上げてくれる役回りで、これがかなりいい! 鑑賞は3D吹替版だったのですが、ヨッシーの声は吹替版でもドナルド・グローヴァーがそのまま担当しているとのことで、3D吹替で観てもあの破天荒な声をちゃんと浴びられるのが地味に嬉しいポイントでした。

もう一段ぐっと効いてきたのが、クッパ親子の構造です。クッパは前作ラストの帰結で、マリオとルイージに小さくされた状態のまま捕らえられて本作に登場します。その間のクッパは敵というよりほぼ友人ポジションで、マリオたちと一緒に旅を進める空気が思いのほか可愛い。これは前作からの観客だからこそじわっと効いてくるポジションだなと感じました。

そこにクッパJr.が現れた瞬間、クッパから一気に子煩悩感が溢れ出してくるのが今作の見どころのひとつ。さっきまで小さくなって連れ回されていたお父さんが、息子の前ではしっかりお父さんの顔をする。やっぱりクッパは、家族モノとしての魅力を持っているキャラだなと再認識させられました。

そしてそのクッパJr.が、父親より一段野心的で、めちゃくちゃ聞かん坊な悪ガキとして描かれているのも面白いところ。父より子の方が悪役テンションが高い、という捻れた構造が今回の対決軸を作っています。一緒に観に行った原作プレイヤーの友人いわく、「原作のロゼッタはもっと巨大な印象だった」とのことで、原作既読組には別のレイヤーで観え方が変わる場面もちらほらあるようです(原作未プレイ組の自分は、映画版のロゼッタ像でそのまま素直に楽しめました)。

ロゼッタとピーチの関係についても、原作には無かった一段踏み込んだ描かれ方が用意されていますが、ここはネタバレ枠なので具体的には書きません。原作プレイヤーには「そこ踏み込んでくるんだ」という驚きが、映画から入った人には「そういう構造なんだ」という納得が、それぞれ別ルートで用意されている作りでした。

マリオ・シネマティック・ユニバースの始まり

ここからが本作で個人的に一番熱量があった話です。

公開前の報道で先に出ていた通り、本作にはスターフォックスのフォックス・マクラウドが登場します。マリオとルイージがチコとピーチを追って旅をしている途中で合流してくる流れで、サプライズ枠というよりはむしろ最後までキーキャラクターとして活躍する厚めの扱い。「ちょっと顔見せに来ました」では終わらないところがまず嬉しいポイントでした。

そしてフォックスがガッツリ絡んでくるということは、画面の規模もぐっとスライドしていきます。本筋の中盤、マリオたちの旅の景色が、ふとマリオというよりスターフォックス・ザ・ムービー側にチャンネルが切り替わる瞬間があって、ジャンルが一段ずれる感覚を映画一本の中でしっかり浴びることになる。何が起きてどう景色が変わるのかは本編のお楽しみとして伏せますが、別シリーズの空気をここまで吸わされる体験はけっこう新鮮でした。

そして、フォックスがなぜそこにいるのか、という説明の過程でスターフォックスのレギュラーメンバーの陰もちらりと差し込まれます。具体的に誰がどう絡むかは本編のお楽しみですが、これがあるおかげで「フォックス単体のゲスト出演」では収まらない広がりを画面に持ってくることに成功していて、見方によってはスターフォックス単独映画化への伏線にも取れる構造でした。

任天堂側の客寄せ枠ではピクミンも数秒だけチラッと顔を出してきます。こちらは完全にカメオで、本筋に絡まずすれ違うだけの登場ですが、それでも「ピクミン、出るんだ」という瞬間の劇場の空気が一段持ち上がるタイプの仕掛けでした。

そう考えると本作って、見方によってはマリオ・シネマティック・ユニバースの始まりとも取れるんですよね。公式に「ユニバース化します」というアナウンスはまだ出ていないので、あくまで個人的な造語・推測ベースの話ではあるのですが、フォックスをここまでガッツリ立ち上げて、ピクミンまで顔出しさせる作りを観ると、任天堂×イルミネーションは本気で映画側のクロスオーバー網を広げに来てる感じがしました。

ちなみにマリオ・シネマティック・ユニバースを略すと MCU で、Marvel Cinematic Universe と完全にかぶります。「Marvel じゃなくて Mario の方の MCU」という、ややこしいけど楽しい時代の入口を観ているのかもしれません。

スマブラ視点のファンサービス

全体的にスマブラ寄りの目配せが多いのも、ファンとしてはかなり嬉しい部分です。

たとえばチコたちが集まって遊んでいるシーンで、それぞれがマリオとドンキーコングを演じてぶつかり合う、つまり**「マリオVSドンキーコング」ごっこ**を始めるくだりがあります。前作の流れを意識した自己言及にも見えるし、同じ任天堂キャラ同士の絡みを画面の隅でこっそり成立させているファンサービスにも見えるしで、勝手に楽しい。本筋とは関係ないところに、こういう小ネタを差し込んでくる余裕があるのが続編の特権だなと思いました。

もう一つニヤッとしたのが、マリオがピーチに贈るプレゼント。これがパラソルなんですよね。パラソルはピーチのキーアイテムのひとつで、なんといってもスマブラでは上Bの復帰技として採用されている由緒ある一品。ゲーム勢としては「あ、復帰で使うやつだ」と即座に変換できるアイテムが、恋人ムーブの小道具として静かに置かれている味わい。さりげないけれど、わかる人には二度刺さる演出でした。

スマブラを通っている人、原作シリーズを通っている人ほど、画面に映る一つひとつのアイテムやリアクションが「あれだ」と繋がっていく作りで、本筋を追うだけでは拾い切れない楽しみ方が随所に仕込まれている、ファンにはたまらない作りでした。

まとめ

正直に書くと、前作を観たときの「ついに満足のいくマリオ映画が来た!」という衝撃と比べてしまうと、本作で受ける感動の幅は少し小さくなります。前作はマリオの声を27年務めてきたチャールズ・マーティネーがカメオで登場するというお祭りもあり、シリーズファンにとっての最初のインパクトが強すぎたんですよね(観た劇場が吹替版オンリーだったので、本人の声を直接聞けなかったのは未だに悔しいところではあるのですが…)。

ただ、それは続編の宿命みたいなもので、本作は本作でマリオ・シネマティック・ユニバースという新しい文脈を立ち上げに来ているのが個人的にかなり楽しみなポイントです。スターフォックス単独での映画化、ピクミンの本格参戦、その先にある任天堂大集合の絵面――そういう未来の可能性をしっかり予感させてくれる作りで、これは続編の方向性として素直に楽しみです!

エンドロール後にも、もう一段ファンサービスの仕掛けが用意されているので、座席は最後まで立たないのが吉かなと思います。

本作を観に行く前の予習としては、まず前作の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は必須。そのうえで原作の『スーパーマリオギャラクシー』とスマブラを通っていると、本編で拾える楽しみのレイヤーが一段増えるので、未経験ならぜひこの機会に触れておきたいところです!


作品情報

イントロダクション

スーパーマリオブラザーズの世界観を基にしたアニメーション映画で、2023年に公開され全世界で13億ドル以上の興行収入を記録した『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』に続く作品。前作に引き続きイルミネーションのクリス・メレダンドリと任天堂の宮本茂が共同で製作し、アーロン・ホーヴァスとマイケル・ジェレニックが監督、マシュー・フォーゲルが脚本、ブライアン・タイラーが音楽を担当する。

引用元:映画『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』公式サイト

トレーラー

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