引用元:映画『君のクイズ』公式サイト
レビュー
ローカル CM が地域差レイヤーで効く仕掛け
個人的に観賞後にいちばん「これ調べないと気が済まないな〜」と思ったのが、本予告にも出てくる「ビューティフル、ビューティフル、ビューティフルライフ」というフレーズです。本予告のなかには「ビューティフル篇」という、このフレーズを前面に押し出した独立した予告動画もあって、観賞前の段階で「なんでこの曲?」とちょっと引っかかる作りになっていました。
実は調べてみると、これは山形県鶴岡市に本社を置く老舗クリーニングチェーンの実在 CM ソングで、1907 年創業の会社が 1964 年からこのキャッチフレーズで放送している、東北民にとっては超ローカルおなじみの CM なんだそうです(地元では天気予報のスポンサーとして毎日のように流れているレベルとのこと)。
そう考えると、山形・宮城・秋田あたりの観客と、そのエリアの外で観た観客とでは、本予告を目にした段階から脳のザワつきが違っていたんじゃないかなと思いました。同じ作品でも観る土地によって見え方がはっきり変わる仕掛けが仕込まれているというのは、なかなか珍しい作りだなと思います。
そういう意味では、なぜこの曲を選んだのか?が劇場で腑に落ちる瞬間も含めて、観賞後にすぐ手元で実在性を確認したくなるくらいに、よくできた仕掛けだなと思いました。
タイトル『君のクイズ』が既にヒント
個人的に本作の最大の謎は「どうしてゼロ文字で回答できたのか?」だと思うのですが、これはタイトルの『君のクイズ』を見た瞬間に、もうこの謎の答えにうっすら仮説が立てられる作りだなと思っていました。
「君のクイズ」と書いてあったらどう解釈するか?というところで、いくつかの可能性をぼんやり想像できる作りになっていて(書きすぎると答えのヒントになりすぎてしまうので具体は伏せます)、観賞前に立てた仮説のどれが当たるか/どれが外れるかを、劇中の謎解きで答え合わせしていく構造になっていました。事前に張った予想ラインが当たっていたあたりは、なるほどそうだったか、と納得しながら観ていました。
そう考えると、本作はタイトル時点で「観賞前にうっすら予想を立ててから劇場に入る」という遊び方ができる作品なのかもしれません。
クイズ専門テクの解説で動画の見方が変わる
本作はクイズプレイヤーの頭の中で何が起きているのかを丁寧に解説していく作りになっていて、なんといっても作中でちゃんと専門用語が登場してくるのが面白かったです!「確定ポイント」「読ませ押し」「ダイブ」あたりの押し方が、それぞれの場面で具体的に使い分けられていて、なるほどなと思いながら観ていました。
そもそも決勝戦の 2 人のクイズプレイヤーは、それぞれまったく対照的なクイズスタイルで描かれていました。攻めるタイプの選手は確定ポイントを待たずに「ダイブ」を決めてくるくらい押しが早くて、番組内でゲストの吉住が「キモいよね〜」と漏らしてしまうほどの異質な押しっぷりでした。対するスタンダード型の選手は、キーワードを拾って推論を組み立てていく王道の思考パターンで、これがエンジニアとして観ていると、最近の AI(ChatGPT のような対話型 AI)がキーワードから連想を広げて答えに辿り着いていく動きや、検索エンジンが入力した単語から関連情報を引き当てていく感覚と、すごく似ているなと思いながら見ていました(AI 業界の人が観ると、また別レイヤーで楽しめるかもしれません)。
劇中には伊沢拓司本人も出演しているシーンがあって、やっぱり QuizKnock 系のクイズプレイヤーがちゃんと監修に噛んでいるんだろうなと、わざわざ調べなくても伝わってきました(あとで一応調べてみたら、ダイブ/読ませ押し/確定ポイントはどれも実際にクイズ界で使われている用語でした)。
そう考えると、観終わったあとに YouTube で早押しクイズの動画を見ると、「あ、これが確定ポイントかな」「いまの押し方は読ませ押しっぽいかも」と勝手に分析しはじめてしまいそうな気がしました。クイズ番組や動画の見方がちょっと変わる作品だなと思います。
まとめ
タイトル『君のクイズ』を見た時点でうっすら立てた仮説が、劇中の謎解きで答え合わせされていく感触は、個人的に想像していた通りで気持ちよく着地してくれました。観賞前から脳の片隅でぼんやり想像していた予想ラインが、劇中でひとつずつ拾われていく作りには納得感があります。
派手なジャンル映画ではないですが、クイズの専門テクの解説で観た後の YouTube やクイズ番組の見方がちょっと変わる体験ができたり、観賞後すぐにローカル CM の実在性を調べたくなる仕掛けがあったりと、観た後に脳のどこかに何かを残してくれるタイプの作品でした。
予想を立てるのが好きな方や、クイズ番組をちょっと違う見方で観てみたい方には、観賞前の想像以上に楽しめる作品なのかもしれません。
作品情報
あらすじ
賞金1000万円を賭けて戦う
生放送クイズ番組 “Q-1グランプリ”の決勝戦。
日本中が注目する中、“クイズ界の絶対王者”・三島玲央と
“世界を頭の中に保存した男”・本庄絆は
共に優勝まであと一問と、王手をかけた。そして迎えた最終問題、早押しクイズ。
張り詰めた空気の中、本庄は問題を1文字も聞かずに解答ボタンを押す。
会場がどよめく中、なんと正解を言い当て、優勝者となった。なぜ彼は問題を1文字も聞かずに正解できたのか?
やらせ? トリック? それとも魔法?
三島は前代未聞の「謎」に挑む——。「謎」に隠された、クイズプレイヤーたちの«人生»。
引用元:映画『君のクイズ』公式サイト
解き明かされる«真実»とは——
これは、全国民へのクイズ。




