レビュー
アギトだけど主役は氷川誠
劇場版『仮面ライダーアギト』の25年ぶりの完全新作で、しかも仮面ライダー生誕55周年記念の節目作。「THE KAMENRIDER CHRONICLE」第1弾として打ち出された本作ですが、観終わって引きずって帰ったのは、新ブランドの肩書よりもむしろ脚本構成のほうでした。
普通アギトといえば、津上翔一が変身する仮面ライダーアギトが主役。ところが今作は、TVシリーズで名脇役だった氷川誠(仮面ライダーG3)を物語の中心に据えていて、「アギトだけど主役は氷川誠」という構成になっています。
TVシリーズ当時の氷川誠といえば、真面目すぎて天然・料理下手で愛されキャラ、というのが個人的な印象。10年以上前に配信で一気見しただけで記憶もうろ覚えですが、今作の氷川を観ていると「あ、こんなキャラだったわ」と当時の感覚がじわっと戻ってくる感じで、その天然・真面目すぎる本質はまったく変わっていません。それどころか、25年経ってその”ズレ”がさらに極まった氷川が、物語が動き出すきっかけそのものを担っているのが今作の上手いところでした。
「とある罪で刑務所に囚われている」という公式サイトの紹介文の時点でなかなかの始まり方ですが、TV時代の氷川を覚えている人ほど、その経緯を観ながら「あぁ、これは氷川だ…」と納得してしまうはず。真面目すぎるあまりズレてしまう氷川節が、25年経ってもまったく変わっていない、というのが個人的に響いた部分でした。
そのうえで、津上翔一とのバランス感もユニークです。TVシリーズの「主人公・翔一/名脇役・氷川」の立ち位置を、ほぼそのまま入れ替えたような構成で観進めることになります。翔一は翔一でちゃんと出番はあるのですが、印象としては「翔一は氷川の物語を後押しする側」に回っている感じ。
なので、津上翔一のアギトを楽しみに観に行くと、ちょっと肩透かしをくらうかもしれないというのは、観に行く前に頭の片隅に置いておくといいかなと思います。
テレビシリーズ放送当時のキャストが勢揃い
前情報はほぼゼロの状態で本作を観に行ったのですが、劇場で予告編を観た程度で、「アギト・G3・ギルスが映画で復活するんだな」くらいの認識で席についたところ、開始直後に小沢澄子が登場した時点で「あ、この辺のキャストもみんな出るのか」と一気にスイッチが入りました。
賀集利樹(津上翔一役)、藤田瞳子(小沢澄子役)、樋口隆則をはじめ、TVシリーズ放送当時のメインキャストがほぼ勢揃い。当然25年も経つので、皆さん確実に年齢を重ねています。なんですが、要潤だけは別格で、「この人だけ25年止まってない?」と思ってしまうレベル。当時の氷川とほぼそのままの佇まいを保っていました。
そのうえで、25年経ってもキャラの中身がブレていないのが大事なポイントだなと思います。賀集利樹の翔一はちゃんと翔一だし、藤田瞳子の小沢は当時の天然な感じも残しつつ、組織の上に立つ大人の貫禄もちゃんと足されている。声や見た目だけが帰ってきた同窓会ではなく、当時のキャラ性が地続きで再起動している印象でした。
PG12 の過激描写と笑える要素のバランス
本作はレーティング PG12 で、子供向けというよりはむしろ昔観ていた層に向けて作られている空気が強くあります。
過激側で印象に残ったのは、はんにゃ金田が演じるキャラクターが持っている「時を止める超能力」の使い方。公式サイトでも触れられている通り、時を止めて、止まっている間に色々と仕掛けを施せる能力なんですが、PVでも仕掛け始めるところまでは見せていて、その続きに痛いやつが控えています。「自分で自分を傷つける方向に仕組まれる」系の描写なので、痛いのが苦手な人はスクリーンの大画面で観るとそれなりにキツいかなと思います。
一瞬ホラー映画かと思ってしまうくらいの描写で、子供向け番組だった頃のアギトとは一段ギアが違う容赦のなさ。TVシリーズで観ていた時は「アンノウンって怖いっちゃ怖いよね」くらいの距離感だった敵組織への恐怖感が、25年経って改めて感じることができました。
その一方で、ちゃんと笑える隙間が残っているのが今作の良さだなと思います。氷川誠の真面目すぎる本質は健在で、その真面目さが極端な状況に投げ込まれることで、こちらの想像とはちょっとズレた行動につながっていく。シリアス一辺倒の重い特撮にはならず、当時のキャラ性がそのまま現代の文脈で笑いとして機能していました。
小沢澄子の「相変わらずな部分」もしっかり残されていて、25年経ってもこの人この感じだったよね、と思える小ネタが要所に挟まれます。TV時代を覚えている人ほど「あぁ小沢…w」となる瞬間が用意されていて、ここの空気感は当時のファンへのご褒美に近かったかなと思います。
PG12の容赦のなさと、当時のキャラ性そのままのコメディ感。この両極を同居させたバランスが、シリーズもののリブートとしてはかなり上手いやり方だなと感じました。
まとめ
本作は「THE KAMENRIDER CHRONICLE」第1弾。すでにカブト・電王が発表されており、いったいどのような展開で新しい仮面ライダーを見せてくれるのか、今から期待でいっぱいです!
作品情報
あらすじ
半凍死、半焼死──
相反する死が、一つの遺体に刻まれていた。
それは、超能力を操る者たちの暴走が生んだ、
誰も見たことのない“不可能犯罪”だった。警視庁未確認生命体対策特殊武装班=
通称<Gユニット>が出動。
若手隊員・葵るり子(ゆうちゃみ)は、
最新鋭の特殊強化装甲服<G6>で
超能力者たちに挑むが、
その強大な力の前に撤退を余儀なくされる。
Gユニット管理官・小沢澄子(藤田瞳子)は
確信する。
この事態を打開するには、
氷川誠(要潤)の力が必要だと。
しかし彼は今、
とある罪で刑務所に囚われていた。氷川の不在に、小沢が思い至ったのは、
かつて<アギト>という未知の力で
アンノウン(未確認生命体)と戦った男・
津上翔一(賀集利樹)。
だが、翔一はすでに
その未知の力を失っていた。
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