レビュー
ただ歩くだけのサバイバル
スティーヴン・キングが原作で、キング原作の映画は当たりが多い印象があるので、前から気になっていた作品でした。原作小説は未読のまま観に行きましたが、程よく満足できる一本だったなと思います。
本作は「ロングウォーク」という競技を題材にしたデスゲームものです。最近観た『ランニング・マン』が記憶に新しかったので、どうしても比べながら観てしまいました。あちらはエンタメとして逃げ隠れする緊張感、追い詰められていくストレスとの戦いがメインでしたが、本作には逃げる相手も隠れる場所もありません。ひたすら自分自身と向き合い続けるタイプの競技で、同じデスゲームでもまったく違う側面を見せてくれます。
なにせ、公式のルールからして「ただひたすら歩き続ける」だけ。時速4.8kmをキープして、速度が落ちて警告を3回受けると即死、休息も睡眠もない、という極限の設定です。ただ歩くだけ、と聞くと地味に思えるのですが、これが想像していたよりずっと過酷で、観ているこちらもじわじわ追い込まれていくような感覚がありました。個人的にこの”シンプルさゆえの地獄”はかなり新鮮でした。
(余談ですが、こんなにひたすら歩き続ける画をどこで撮ったんだろうと、ロケ地の選定は大変そうだなと、変なところが気になったりもしました)
ルール説明で身構えたものの
最初にルール説明があった時点では、どうやって参加者を蹴落としていくんだろう、という視点で展開を勝手に想像していました。お互いを妨害して脱落させ合うような、ギスギスした駆け引きになるんだろうな、と身構えていたんです。
ところが実際は、身構えていたその展開とは、まったく違う方向から過酷さが押し寄せてきました。ここでは詳しく書きませんが、デスゲームと聞いて頭に浮かべる絵面とは少し違う角度で攻めてくるので、予想を気持ちよく裏切られたなと思います。
ただのサバイバルでは終わらない
個人的に印象に残ったのは、本作が単なる勝ち抜きサバイバルだけでは終わらないところです。極限まで追い込まれた状況だからこそ立ち上がってくる人間ドラマがあって、デスゲームものという枠で身構えていると、思わぬところで心を動かされる瞬間があります。
このあたりは前情報をあまり入れず、まっさらな状態で観たほうがぐっとくると思います。ジャンルものとして消費して終わり、という作品ではなかったなというのは伝えておきたいところです。
こんな競技、どうしてまかり通るんだ
一方で、引っかかった部分もあります。公式サイトのあらすじにもあるように、これは「近未来のアメリカで国をあげて開催される競技」なのですが、脱落=死という構図を国中がエンタメとして見守っている。どうしたらこんな競技が成立してしまうんだろう、という疑問は最後まで少し残りました。
そう考えると、デスゲーム系の題材って、もし実際に存在したらどれだけ愚かで、人の命をどれだけ軽く見ているんだろう、と考えさせられます。フィクションだと分かっていても、つい現実の物差しで測ってしまうくらいには、突きつけてくるものがある作品でした。
まとめ
逃げ隠れの緊張感ではなく、ひたすら自分自身と向き合い続ける過酷さ。その切り口は個人的にかなり新鮮で、キング原作はやっぱり外れが少ないなと改めて思いました。程よく満足できる、新しいタイプのデスゲームものだったなと思います。
ただ、観終わった後に残るのは、スッキリした爽快感とはちょっと違う感触です。こんな競技が国をあげて成立してしまう世界そのものへの、居心地の悪さのようなものが後を引きます。デスゲームというジャンルがもし現実にあったらと想像すると、その愚かさにぞっとさせられる。そんな問いを静かに置いていってくれる作品だったなと思います。
作品情報
あらすじ
戦争によって国家が分断された
近未来のアメリカで
国をあげて開催される競技“ロングウォーク”。ただひたすらに歩き続けるだけで
破格の賞金と願いを1つ叶える権利を
獲得できるこの祭典に、
選ばれし50人の若者が挑戦する。「時速4.8kmをキープすること」
「速度を下回り警告を受けないこと」
「最後の一人になるまで歩き続けること」この勝者になる為のルールの裏に、
休息も睡眠も救いも存在しない。3つ警告を受けると即死の状況下で臨む、
引用元:映画『ロングウォーク』オフィシャルサイト
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