レビュー
貞子と伽椰子の”いいとこ取り”で立ち上がる、タカヤサマというキャラクター
『ミンナのウタ』『あのコはだぁれ?』と観てきて、この3作目で個人的にいちばん感心したのは、高谷さなという存在が「タカヤサマ」というホラーアイコンとしてしっかり立ち切ったところでした。3作かけて積み上げてきたものが、ここで一気に形になった感覚があります。
そう感じた理由のひとつが、本作でさなの背景がさらに一歩踏み込んで描かれるところです。3作かけてじわじわ輪郭が濃くなってきた高谷さなが、ここにきて「こういう存在なんだ」と腑に落ちる感覚があって、シリーズを追ってきた甲斐があったなと思いました。
そのキャラクター性を見ていて頭に浮かんだのが、日本ホラーの2大アイコンでした。名前を吹き込むと死ぬ「カセットテープ」という呪いの装置は、どうしたって『リング』の呪いのビデオ、つまり貞子の系譜を思わせます。その一方で、足元からじわっと這い上がってくるような湿度の高い怖さは、やっぱり『呪怨』の伽椰子のあの感じなんです。
考えてみると、その伽椰子を生み出したのが本作の監督・清水崇その人なわけで、日本ホラーの2つの怖さの型を、ひとりの作り手が「いいとこ取り」で1体のキャラクターに落とし込んでいる、というのが本作のタカヤサマの強さだと思います。これは清水崇監督だからこそできる合わせ技だなと、観ていて素直に唸らされました!
ありそうでなかった、”カウンセラー”を主人公に据えた入り口
本作そのものの設定で個人的にいちばんいいなと思ったのが、主人公を心理カウンセラーにしたところでした。タカヤサマの”遊び”がすでに広まって、最初の犠牲者まで出てしまった学校に、平瀬小春(鎮西寿々歌)がメンタルケアの専門家として外から招かれて入っていく。この”カウンセラー”という立ち位置そのものが、ホラーの主人公としてありそうでなかったなと思いました。
しかも、事件が起きた後に外側から足を踏み入れる人が主人公、というのも新鮮でした。学校に元からいる人ではなく、犠牲者が出てから呼ばれて入っていく立場なので、こちらも小春と一緒に「これは何が起きているんだ」と、一歩ずつ様子をうかがいながら校内に踏み込んでいく感覚になります。
その入り口をさらに効かせているのが、”遊び”を実行してしまった一人が小春自身の妹・菜々美(星乃あんな)だという設定です。人の心を落ち着いて扱うはずのカウンセラーが、身内を当事者に抱えたまま事件に向き合わざるを得ない。専門家としての冷静さと、家族としての私情が最初から同居しているので、事件を”外から解決しに来ただけの人”の物語にならず、いやおうなく渦中へ引きずり込まれていくのが良かったなと思います。
ジャンプスケアに頼らないのに、期待を裏切らず呪い殺してくる安定感
このシリーズが安定して面白いなと感じるのは、なんといってもホラーそのものの質の部分です。タカヤサマは前作の時点でも、バッと驚かせるジャンプスケアはそんなに多くなかったと思うのですが、それでも怖い、というのが個人的にこのシリーズの強みだと思っています。
驚かし要素を盛りまくらないのに、劇中でタカヤサマというキャラクターがちゃんと立っていて、こちらの期待を裏切らずにしっかり呪い殺していく。この「ちゃんと怖いことをやってくれる」安定感が、まさに貞子や伽椰子がずっとやってきた、恐怖心をじわじわ植え付けていくタイプの怖さだなと思いました。
そもそも貞子も伽椰子も、飛び出してくるから怖いというより、”そこに存在している”というだけで怖いアイコンだったと思うんです。タカヤサマも同じで、驚かしの回数で稼ぐのではなく、キャラクターとしての格でちゃんと怖がらせてくる。その域にまで来たんだなと感じました。
飛び道具で一発ドッキリさせるより、観ているこちらの奥のほうに不安をそっと置いていくような怖がらせ方なので、静かに効いてくるホラーが好きな人ほど、この安定感にハマるんじゃないかなと思います。
関わりのない他人同士を”タカヤサマ”という一点だけで束ねてくる構成
前作も含めて観てあらためてすごいなと思ったのが、まったく接点のない人たちを「タカヤサマ」という共通点だけでひとつの物語にまとめあげてしまう構成です。本来なら交わらないはずの人生が、この存在を経由するだけで、気づけば同じ一本の線の上に並んでいる。この束ね方が、タカヤサマというハブの強度そのものを証明しているように感じました。
言い換えると、毎回まったく違う人たちの物語でも、真ん中にタカヤサマがいるだけでシリーズとして地続きになっていく作りなので、どの1本から入っても「タカヤサマとは何者なのか」がちゃんと積み上がっていくのが上手いなと思います。
そしてシリーズを追ってきた人ほどニヤッとさせられるのが、過去作との繋がりの見せ方です。序盤に映り込む”ある佇まい”だけで、「あ、これはタカヤサマ系だ」とピンとくる小道具が出てきて、最初は身構えずに観ていたところに、そこでスッと背筋が伸びました。
物語が進むにつれて、シリーズを追ってきた人ほど「あの糸、ちゃんと繋がってたのか」と嬉しくなる登場も用意されています。誰が、とはここでは書きませんが、過去作をなぞってきた記憶がある人ほど、その一点でぐっと世界が地続きになる感覚があると思います(このあたりはシリーズものの醍醐味ですねw)。
まとめ
派手に驚かせるより、じわじわ恐怖を植え付けてくるタイプのホラーとして、安定した面白さのある1作でした。3作を経て、高谷さな=タカヤサマが、貞子や伽椰子と並べて語りたくなるくらいの、日本の新しいホラーアイコンとしてしっかり定着したなと感じています。
ひとつだけ実用的な話をしておくと、本作はエンドロールが終わったあとにも映像があります。せっかくなので、最後まで席を立たずに観てもらえたらなと思います!
シリーズを1作目から追ってきた人はもちろん、貞子や伽椰子のような「日本のホラーアイコン」が好きな人にも、タカヤサマという存在を一度見届けてほしいなと思います。
作品情報
あらすじ
ただの遊びのはずだった。最初の一人が死ぬまでは――。
若者の間で、密かに流行る、絶対にやってはいけない「遊び」があった。
それは 学校の、誰もいない階段。その13段目—。カセットテープに日付と名前を吹き込むと、名前を吹き込まれた人は死ぬ。というもの。
軽い気持ちで実行した学生達の日常は歪み始め、やがて校内で”カセットテープに名前を入れられた人物が相次いでその日付に謎の死を遂げるという事件”が発生。
事態を重く見た学校に招聘された心理カウンセラー・平瀬小春(鎮西寿々歌)は、学生のメンタルケアの為に事件を目撃した学生にカウンセリングを行うが、「遊び」を実行した一人は小春の妹・菜々美(星乃あんな)で…。
不可解な出来事が起こり、一人、また一人と怪異に巻き込まれていく学生達。
「…..あんなこと、するんじゃなかった……」
引用元:映画『だぁれかさんとアソぼ?』公式サイト
トレーラー
This product uses the TMDB API but is not endorsed or certified by TMDB.




