レビュー
灯台での迎え撃ち方が、どこかホーム・アローン
本作でいちばんワクワクさせられたのは、序盤の灯台での攻防です。細かく書くと若干のネタバレになるので控えますが、観ながら頭に浮かんでいたのは『ホーム・アローン』でした。
予告にも映っている範囲で書くと、罠を張って捕らえたり、灯りを使って目をくらませたり。力でねじ伏せにいくのではなく、迎え撃つ側として用意しておいたもので対処していきます。ケビンが家にあるもので侵入者をあしらっていた、あの感じに近いかもしれません。
そうやって並べていくと、いずれ敵が来ることを予見していたと思う動きそのものでした。あらすじで語られるメイソンは、孤島の灯台でチェスと絵筆に向かっている隠遁生活の人です。その人物像から想像していた絵面が、迎え撃つ準備の段になって一気に切り替わります。
しかも舞台が灯台なので、逃げ場がないぶん迎え撃つ側に地の利があります。閉じた場所に籠もっているという、一見すると不利にしか見えない状況が、準備さえしてあれば有利側に反転する。この入りは掴みとしてかなり強かったなと思いました。
「そこに隠れていろ」が増えていく
個人的に、本作がこれまでのジェイソン・ステイサム作品といちばん違うなと感じたのが、隣に守る相手がいることでした。『ワーキングマン』も『ビーキーパー』も、基本的には彼が単独で暴れる話です。今回はジェシーを連れたまま戦うことになります。
戦い方のベースそのものが大きく変わるわけではありません。ただ、その合間に「そこに隠れていろ」「ここから動くな」といった指示が挟まってきます。守る対象がいることで、動く前にひと手間が増えるわけです。
面白いのは、その変化が序盤との対比で効いてくるところです。あらすじにもあるとおり、メイソンは最初のうちジェシーが話しかけてきてもぶっきらぼうに追い返しています。それが、ちゃんと気にしながらアクションする場面がちょいちょい出てくるようになる。関係が変わったことを、セリフではなく戦っている最中の所作で見せてきます。
そしてジェシーの側も、守られているだけの存在では終わりません。ちょいちょい連れ去られはするのですが、たまにメイソンの護衛をしたりという場面もあって、そこは素直に楽しめました。
この「守りながら」という縛りがあるぶん、単独で無双していく作品とは緊張感の質が違っていたかなと思います。一人なら押し通せる場面でも、もう一人ぶんの安全を確保してからでないと動けない。その分だけ、画面の張り詰め方が変わっていました。
道具も素手も銃も、ひと通り
アクションはさすがステイサムといった具合で、安定して見られました。この人の映画に期待して行くものは、ちゃんと期待どおりに出てきます。
『ワーキングマン』は現場監督という設定を活かして、ハンマーやツルハシといった工具を武器にする一点突破のところがありました。本作はそこまで振り切ってはいませんが、そのかわりに、それなりの道具を使ったアドリブ・素手の格闘・銃撃戦が結構バランスよく入っています。どれか一つに偏っていないので、同じ絵が続く感じにはなりませんでした。
上映時間は107分です。体感としてもちょうどいい尺で、間延びしている場面はとくにありませんでした。
今回は吹替で鑑賞しています。メイソンの声はステイサム作品でおなじみの山路和弘で、公式も「安定と信頼のステイサムボイス再び」と打ち出しているとおりの布陣です。吹替派の人はそのまま安心して選んで大丈夫かなと思います。
追われている理由が、あらすじから増えない
一方で引っかかったのは、メイソンが追われる原因になった事件そのものの掘り下げでした。
公式のあらすじには、元MI6長官のマナフォートの命令に人道上の理由で背いたため、恨みを買って政府の“抹殺リスト”に登録された、と書かれています。本編で語られるのは、ここに毛が生えた程度でした。あらすじを読んでから観に行った人が、観終わったあとに新しく持ち帰れる情報がほとんど増えません。
まったく触れられないわけではありません。ただ、背いた命令がどういうものだったのか、その事件で何が起きたのかは、口頭での説明として語られるだけです。場面として見せてもらえるわけではないので、言葉の上では分かっても実感としては入ってこず、物足りなさは結局変わりませんでした。
そこが映像として少しでも積まれていたら、追う側と追われる側のどちらにも重さが乗って、まったく違う手触りになっていたはずです。
これも一つ毎度のことながら、という話ではあります。『ワーキングマン』のレビューでも、設定を活かしきれていないもったいなさを書きました。同じ感想を同じ俳優の別作品でまた書いているので、これはもうステイサム映画の様式なのかもしれません。
尺そのものはちょうどよかったのですが、深掘りが足りなかったぶん、観終わったあとにちょっと物足りない感じは残りました。
まとめ
いつものステイサムを摂取しに行くつもりで劇場に入って、アクションについてはその期待どおりのものが出てきました。そこは安心して観に行っていい作品です。
期待と違ったのはジェシーの存在のほうでした。守る相手を連れて戦うという縛りが入ったことで、一人で押し通していた過去作とは緊張感の出方が変わっています。ぶっきらぼうに追い返していた相手を、いつのまにか庇いながら戦っているという流れは、アクションの合間にちゃんと効いてきます。
事件の全容がほとんど語られないところは、最後まで物足りないままでした。それでも「守るものがある戦い方」という一点では、『ワーキングマン』や『ビーキーパー』とは確かに違うものが観られます。ステイサム作品を追いかけている人ほど、その差分を確かめに行く価値はあるかなと思いました!
作品情報
あらすじ
スコットランド沖の孤島にそびえ立つ灯台で、一匹の愛犬を従えて暮らすマイケル・メイソン(ジェイソン・ステイサム)は、外界と隔絶した隠遁生活を送っている。チェスの盤面とにらめっこし、時折絵筆をとることが日課のメイソンのもとには、週に一度、ジェシー(ボディ・レイ・ブレスナック)という少女とその叔父がボートで生活物資を届けにやってくる。しかし他者との接触を嫌うメイソンは、ジェシーが話しかけてきても、ぶっきらぼうに追い返すだけだった。
ある日、猛烈な嵐によってジェシーが叔父のボートに戻ろうとして溺れかけたとき、メイソンはためらうことなく命がけで救出に向かう。英国政府の元特殊部隊員であるメイソンと、家族を亡くしたジェシーは次第に心を通わせていくが、突如として情報機関MI6に襲撃されてしまう。実はイギリス政府の元特殊部隊員であるメイソンは、エリート諜報員養成プログラム“トンビ”の初期メンバーで、“最強の精密機械”の異名を取った経歴の持ち主である。当時の上司であり、元MI6長官のマナフォート(ビル・ナイ)の命令に人道上の理由で背いたため、彼の恨みを買って政府の“抹殺リスト”に登録されていたのだ。すべての落とし前をつける決意を固めたメイソンは、ジェシーを守りながら英国本土に舞い戻るが、行く手にはMI6の監視網とスゴ腕の刺客が待ち受けていた……。
引用元:映画『シェルター』公式サイト
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