レビュー
淡々と証言を重ねていく前半
本作は、心霊スポットとして知られる墓地に肝試しに出かけた大学生たちの一人が翌日行方不明になり、残されたメンバーの証言から「あの夜、何があったのか」を辿っていくホラーです。公式サイトのあらすじにもある通り、物語のほとんどは関係者の証言と、それにまつわるシーンで組み上がっていく作りになっています。
肝試しに心霊スポット、というホラーとしては定番の入り口です。原作は『近畿地方のある場所について』で知られる背筋さんで、断片的な証言を積み上げながら全体像に近づいていく構成は、いかにもこの作風だなと思いました。個人的に観ながらずっと感じていたのは、前半はかなり淡々と進むな、ということでした。分かりやすく脅かしてくるようなホラー味は薄くて、証言と回想が順番に流れていく感じ。ジャンプスケアで飛び上がらせるタイプではないので、むしろどこかに怖さやミステリーのヒントが隠れていないか、注意深く探しながら観るタイプの作品かなと思いながらスクリーンに向かっていました。
そういう作りなので、ホラーとしては全体的に優しめです。明確な敵意や強い怨みがドンと前に出てくるわけでもなくて、脅かし方はかなり控えめ。個人的には、この脅かしすぎない誠実な手触りは嫌いじゃなくて、派手にビックリさせられるのが苦手な人でも入っていきやすいんじゃないかなと思いました。
黒背景・ドアップで見せる証言
画づくりで印象に残ったのが、証言シーンの見せ方です。証言はずっと黒い背景に人物の顔のドアップという、かなり削ぎ落とした画面で進んでいきます。余計な情報を全部そぎ落として、話している人の表情だけに集中させてくる作りです。
これがなかなか曲者で、背景も小道具もほとんど無い画面だからこそ、逆にどこかにヒントが隠れているんじゃないかと、つい画面の隅々まで目を凝らしてしまいました。情報量を絞った画面ほど、わずかな変化やノイズのほうが際立って見えるもので、その心理をうまく利用しているなと感じました。注意深く観る楽しさがあるという点では、こういう作りは個人的に好きだなと思います。
真相を委ねられる作りと、その物足りなさ
正直なところ、観終わってからの気持ちは微妙寄りでした。この作品はおそらく「観た人それぞれに真相を考えさせたい」タイプで、答えをきっちり一つに絞らず、解釈を委ねてくる作りになっています。そういう狙いは分かるのですが、どうも考えが乗ってこないというか。
ミステリーとして観ても、途中で思わず頭を抱えるような驚きや、パズルがカチッとハマる「あっ、そういうことか」の瞬間があるわけではなくて、ホラーとして観ても強く突き刺してくるわけではない。どちらの方向にも大きく振れない分、全体を俯瞰したときに「結局、何を見せられたんだろう」という感覚のほうが残ってしまったのかなと思います。手がかりを探すこと自体は楽しかったのに、探した先にあるものが少し物足りなかった、というのが個人的な観賞後の感想でした。
まとめ
とはいえ、この物足りなさが本当に作品の弱さなのか、それとも自分がうまく乗り切れなかっただけなのか、観終わってからしばらく考えていました。真相を一つに定めず委ねてくる作りだからこそ、同じシーンを観ても、拾う手がかりや解釈の仕方によって、違う「答え」に辿り着く人もいるんじゃないかなと思います。
脅かしすぎない誠実な作りと、削ぎ落とした画面で証言に集中させる演出は、この作品ならではのものでした。淡々とした空気や、ヒントを探す時間そのものを楽しめる人にとっては、また違った手触りの一作になるのかもしれません。あなたは証言のどこに引っかかり、あの夜に何を見るのか。気になった方は、ぜひ自分の目で確かめてみてほしいなと思います。
作品情報
あらすじ
「あの夜、何があったかお話ししますね」
心霊スポットとして有名な墓地の呪われた木についての噂を聞き、肝試しに出かけたある大学生たち。しかし、翌日グループの一人が行方不明になってしまった。
その日を境に、彼らの身の回りに不可解なことが起きるようになり、次第に何かによって追い詰められていく…。
果たしてあの日、何が起きたのか?あの日にまつわる証言に導かれて明らかになる、<おそろしい結末>とは――。
引用元:映画『口に関するアンケート』公式サイト
トレーラー
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