【レビュー】マスターズ・オブ・ユニバース

マスターズ・オブ・ユニバース

レビュー

モブっぽいのにキャラが立っている、憎めないスケルター

観終わってまず人に話したくなったのが、敵も味方も妙に”モブっぽい”のに、ちゃんと一人ひとりキャラが立っている、という絶妙なバランスでした。脇に流れていきそうな顔ぶれなのに、観ているうちに「あ、こいつ良いな」と引っかかってくる感じがあって、群像としての賑やかさが楽しい作品です。

個人的にいちばん刺さったのが、宿敵スケルター。骸骨の見た目で悪の軍団の頂点に立つ最高指揮官のはずなのに、どこか抜けていて、ラスボスとしての威圧感はそこまで強くない。その絶妙なズレが、むしろ好みでした。

観ながらずっと頭にダブっていたのが、『オーバーロード』のアインズ・ウール・ゴウンです。骸骨の支配者という見た目の説得力と、堂々と上に立っているのにどこか中身が抜けている感じが、スケルターとそのまま重なって見えました。吹替の杉田智和の声も込みで、威厳と可笑しみが同居しているキャラクターになっていて、悪役なのに憎めない。敵側がここまで愛嬌を持っていると、対立の構図そのものがちょっと楽しくなってくるなと思いました。

CGに頼りすぎない生身の殺陣と、予算感のある世界観

宇宙を舞台にしたスケールの大きいCG大作なのに、CGに頼りすぎていないアクションがしっかり用意されているのも見どころでした。なかでも個人的に応援したくなったのが、生身の殺陣です。

ダンカン(マン・アット・アームズ)の殺陣が頼もしくて、観ているこちらが思わず加勢したくなる力強さがありました!誰とどう斬り結ぶかは本編のお楽しみとして伏せますが、CGの物量で押し切るのではなく、生身のアクションでしっかり見せ場を作ってくるのが嬉しいところでした。

その一方で、CGが映えるところはちゃんと映えていて、惑星エターニアの世界観やビジュアルは「これは結構予算をかけたんじゃないか」と思える出来栄えでした。異世界としてのスケール感があって、画面を観ているだけでもワクワクできる。CGも生身も、どちらかに振り切らずに両方の良さを出してきたのが、アクション面での好印象につながっていました。

このチープさは”狙い”なのかもしれない

設定もキャラ造形も、観る前からどこかチープでB級っぽさを感じていて、その印象は観終わっても大きくは変わりませんでした。良くも悪くもありきたりで、奇をてらわない王道。そこはそのままでした。

ただ、それが”狙い”なのかもしれないと思わせる入り口がありました。作品の冒頭で、観客が思い描くヒーローものの要素が一通り詰まっている、と作品自身が宣言するようなナレーションが入るんです。正確な言い回しまでは覚えていないのですが、ベタさやお約束をむしろ自覚したうえで堂々と出してきている、という空気を最初に感じました。

そう考えると、このありきたりさは欠点というより設計なのかなと受け取れます。とはいえ、それがプラスに転がったかというと、個人的にはプラスにもマイナスにもならず、そのままだったというのが正直な距離感です。狙いはわかる、でも刺さりきりもしなかった、くらいの温度感で観ていました。

惜しいのは、地球パートのオリジン描写

気になった点を挙げるなら、全体的に説明不足感があって、とくに地球パートが物足りなかったところです。

あらすじにもある通り、アダムは幼い頃に地球へ送られ、15年かけて伝説の剣パワーソードを見つけ出します。でも、その15年がほとんど描かれない。エターニアに帰るという使命を自認したまま大人になっていく中で、地球の生活にどう順応したのか、どれだけ剣を探して見つからなかったのか、そのあたりの苦悩がもっと細かく描かれていれば、主人公への感情移入がもう一歩進んだのかなと思いました。

ここで思い出したのが、やっぱりスーパーマンです。カル・エルが地球に不時着して、クラーク・ケントとしての生活を積み重ねながらスーパーマンになっていく、あのオリジンを丁寧に描く作品が多いように、本作ももう少しアダムのオリジンを見せてほしかった、というのが個人的な本音でした。

とはいえ、エターニアパートもそれなりのボリュームがあったので、いっそ地球パートとエターニアパートで2部構成にしても良かったのかもしれません。ただ、それはそれでダレてしまいそうな気もして、今のテンポに収めたからこその絶妙なボリューム感なのかな、とも思います。(このあたりは観る人によって評価が割れそうなところ。)

まとめ

どうせB級なんだろうな、と少し身構えて観に行ったわりに、思っていたより満足度高めでした。憎めないスケルターのキャラクター、CGに頼りすぎない生身の殺陣、予算感のある世界観と、ベタさを抱えつつもちゃんと楽しませてくれる作りになっています。

地球パートの物足りなさや、全体の説明不足は惜しかったのですが、劇中には随所に続編を期待させる仕掛けがあって、これはほぼ続編が確定しているんじゃないか、という気配すら感じました。

アダムのオリジンをもっと見たかったというのは、今作への心残りとして残るところです。続編があるなら物語はおそらくここから先へ進んでいくはずなので、その心残りは今作のうちに味わっておくものなのかもしれません。とはいえ王道ヒーローものとしての土台はしっかりできているので、ここから化けていく余白も十分にあるはず。続きを楽しみに待ちたいなと思います!


作品情報

あらすじ

惑星エターニアの王子として生まれたアダム。
幼い頃に故郷で戦争が勃発し、身を守るべく“誰にも知られない場所”である地球に送り込まれた。

15年後、成長したアダムは伝説の剣“パワーソード”を見つけ出す。

剣に導かれ故郷へ戻った彼だったが、エターニアは邪悪な宿敵スケルターによって陥落していた…。
エターニアとその人々を救うべく、アダムは〈ヒーマン〉として悪の軍団との死闘に挑むことを決意する――!

引用元:映画『マスターズ・オブ・ユニバース』オフィシャルサイト

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