レビュー
おもちゃの時代の終わり? タブレットという新しいライバル
トイ・ストーリーといえば、おもちゃたちが人間の見ていないところで動き出す、あのワクワクがずっと軸にあったシリーズです。ただ今回は、その”おもちゃ”というもの自体が時代に押されはじめている、というところから物語が始まります。
少女ボニーの日常に、タブレット〈リリーパッド〉がやってきます。他の子と同じように画面に夢中になっていくボニーを見ていると、これはもう完全に現代の子育てあるあるだなと感じました。おもちゃ箱よりタブレット、という流れは身の回りでもよく見かける光景で、ウッディたちおもちゃ側の焦りが妙にリアルに刺さってきます。
ジェシーがウッディに助けを求めて、そこにバズも加わって、というおなじみのタッグが今回も組まれます。ボニーの心を取り戻すために立ち上がる、という筋立て自体はシリーズの王道なのですが、その”取り戻す相手”がタブレットになっているのが今作の新しさだなと思いました。
個人的におもしろいなと思ったのが、本作が立ちはだかる相手として持ち出してきたのが、悪いおもちゃでも人間でもなく”デバイス”そのものだったところです。遊びの相手が画面の向こうにいる時代に、モノとしてのおもちゃはどう友だちでいられるのか。デジタルでの友だち作りの難しさみたいなところまで踏み込んでいて、今まさにタブレット片手に育っている子どもたちには、大人が思う以上に深く刺さったんじゃないかなと予想しました。
トイ・ストーリー2に泣いた人へ、ジェシーの物語
今回いちばん感情を持っていかれたのが、ジェシーとエミリーのエピソードです。予告にも出ているので触れてしまいますが、あのカウガール人形のジェシーと、彼女のかつての持ち主だったエミリーの物語が、本作でぐっと掘り下げられます。
これまではどちらかというとウッディとバズが物語の中心にいた印象ですが、今回はジェシーにしっかり光が当たっているのも嬉しいポイントでした。明るく元気なカウガールではあるものの、その裏に抱えているものを2で知っているだけに、彼女が主役級で掘り下げられること自体にグッときました。
トイ・ストーリー2を覚えている人なら、ジェシーの回想シーンで流れるあの曲(「わたしを愛して」)を思い出すはずです。持ち主に置いていかれるまでを描いたあの回想が刺さっていた人ほど、本作の掘り下げには当時の思い出ごと連れ戻されると思います。何がどうとは書けないのですが、2の時点でジェシーに抱いていた切なさを覚えている人にとっては、かなり効いてくるはずです。
個人的な感動の”山”の高さでいうと、トイ・ストーリー3のあのラストの振り切り方には一歩及ばなかったかな、という感覚もありました。ただこれは3のクライマックスが強すぎるだけの話で、作品として見劣りするという意味ではまったくないです。むしろジェシーというキャラの背景を知っているほど、静かにじわじわ来るタイプの感動で、劇場を出たあとも何度も思い出してしまうくらいには後を引きました。
1・2を通ってきた”親世代”にこそ刺さる
そういう意味で本作は、子どもと一緒に観に来た大人、それも初代トイ・ストーリーやトイ・ストーリー2を子どもの頃に通ってきた”親世代”にこそ刺さる作りになっているなと感じました。
というのも、シリーズを最初から追ってきた人ほどニヤッとできる仕掛けが、あちこちに仕込まれています。ネタバレになるので具体的には伏せますが、初代を知っている人ほど「あっ!」と反応してしまうポイントがあって、そこは個人的に心のなかでハイタッチしたくなるくらいのテンションでした。長年シリーズを追ってきた人へのプレゼントみたいな瞬間なので、1・2をもう一度おさらいしてから観に行くのが吉かなと思います。
あと、これはかなりの小ネタなのですが(今回は吹替版で鑑賞しました。アニメーション作品は吹替版しか上映していない劇場も多い印象があります)、とあるシーンにちょい役で数秒だけ出てくる、乗り物に変形するロボットのおもちゃがいます。どう見てもトランスフォーマーを意識しているキャラなのですが、その吹き替えがなんと子安武人さんでした。子安さんといえば『ビーストウォーズ』のコンボイ(オプティマスプライマル)役でおなじみで、実写『トランスフォーマー/ビースト覚醒』でも同じ役を演じている、まさにトランスフォーマー側の顔とも言える人です。会社も権利もまたいだうえでこの配役を狙ってきたのだとしたら、イースターエッグとしてかなり秀逸だなとニヤニヤしてしまいました。(さすがに狙ってますよね…w)
まとめ
トイ・ストーリーが30年かけて描いてきた、人間とおもちゃの絆。その最新作が、おもちゃという存在そのものが時代に問われる状況を真正面から扱ってきたのは、シリーズらしい向き合い方だなと思いました。
満足度は高めです。感動の振り切り方という一点では3のインパクトが今も頭にちらつくものの、ジェシーの物語の掘り下げも、現代っ子とデバイスというテーマの選び方も、しっかり心を動かしてくれました。
なんといっても、初代や2を子どもの頃に通ってきた人ほど報われる作りになっているので、当時おもちゃで遊んでいた側が、今度は自分の子どもと一緒にスクリーンの前に座る、という体験そのものがちょっとエモいです。あの頃ウッディやバズに夢中だった人こそ、ぜひ劇場で確かめてほしいなと思います!
作品情報
あらすじ
想像力豊かで内気な少女・ボニーの成長を、そばで見守ってきたカウガール人形のジェシー。しかし、タブレット〈リリーパッド〉の登場で日常は大きく変わる。
「みんなの時間がタブレットに支配されている」─他の子どもと同じように画面に夢中になり、このままでは遊びの中で輝いていたボニーの笑顔が失われていく…その一大事にジェシーは、ウッディに助けを求める。再びタッグを組んだウッディとバズと共に、ジェシーはボニーの心を取り戻すため立ち上がるが…。旅の途中で “ハイテクおもちゃ”のスマーティー・パンツたちと出会い、思いがけない協力によって物語は新たな方向へ──。
「トイ・ストーリー」が描き続けてきた、人間とおもちゃの絆。その先にたどり着く究極の“答え”とは?
引用元:映画『トイ・ストーリー5』公式サイト
トレーラー
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