レビュー
セスナから見下ろす山と自然が、ずっと画になる
本作の主人公ヒッグはパイロットで、小型機の無線に届いた謎の声に導かれて空へ飛び立ちます。ここは公式のあらすじにも書かれているところなので、そういう作品なんだなと思って観に行ったのですが、この飛んでいる間の景色が想像以上に良かったです。
見えているのは山と自然です。荒廃した世界が舞台なので、地上で起きているのは奪い合いと殺し合いなのですが、上空に抜けた瞬間に画面に映るものが一気に切り替わります。雄大で、ずっと見ていられる見応えがありました。
個人的に気になったのは、この景色がCGっぽく見えなかったところです。実写っぽく見えたというだけで、実際にどう撮られているのかは分かりません。ただ、作りものを見せられている感じがしないというのは、それだけで画の強さになるなと思いました。
セスナで飛ぶという設定そのものが、この作品でいちばん効いている部分かもしれません。地上を歩いて移動する話だったら、この景色は絶対に出てきていません。
生き残った人たちの人間ドラマは、ちゃんと描かれている
もう一つ良かったのが、生き残っている人たちの人間ドラマでした。世界がここまで壊れたあとで、人と人がどう関わるのかというところは、しっかり描かれています。
ヒッグは元軍人のバングリーと共同戦線を張ることで日々を生き延びている、というのが公式のあらすじにある関係です。奪い合いが当たり前になっている世界で、それでも誰かと組んで生きているという状態そのものに、常に緊張感がついてまわります。
そこにヒッグの愛犬ジャスパーと、亡くなった奥さんの記憶が心の拠り所として置かれています。こちらも公式のあらすじに書かれている範囲ですが、この人が何を支えにして正気を保っているのかは、観ていてきちんと伝わってきます。
世界そのものの説明には物足りなさが残ったのですが、人物同士のやりとりについてはそれを感じませんでした。そこは素直に良かったところです。
あのウォーボーイズみたいな連中は、結局何者だったのか
一方で、観終わったあとにいちばん引っかかっているのがここです。世界観や設定は良さそうなのに、背景が語られてなさすぎるなと思いました。
疫病が原因で世紀末みたいな荒廃した世界になっているのは分かりました。生き延びるために奪い合いが起こるのも分かります。ただ、予告にも映っている襲撃者の連中が、さながら『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のウォーボーイズみたいなのです。あれは何なんだろう、というのが最後まで残りました。
『バイオハザード』みたいに、疫病でゾンビ化しているという説明が付くなら分かります。でもそういうわけでもなさそうなのです。普通の人間だとしたら、ちょっと容赦無さすぎるし狂気じみています。
ある意味それが狙いなのかもしれません。説明されないまま、ただ怖い集団としてそこにいる、というだけで成立させにいっている可能性はあります。それでも、よく分かんなかったな、という感想のほうが先に来てしまいました。
同じことが疫病そのものの正体や、社会がどう崩れていったのかにも言えます。この辺が全部、輪郭のないまま進んでいきます。世紀末ものとしての絵面は揃っているのに、そこに至るまでの経緯が空白なので、目の前で起きていることをどう受け取ればいいのか決めきれないまま観ることになりました。
亡き妻の回想に使った尺を、そっちに回してほしかった
もう一つ引っかかったのが、尺の配り方です。
亡くなった奥さんとの描写が、ちょっとくどく感じました。ヒッグの心の拠り所という設定上、この記憶が繰り返し出てくること自体は分かるのですが、同じところを何度も踏んでいる感じがあります。
上映時間は119分です。極端に長いわけではないのですが、体感としてはちょっと長めだったかもしれません。回想で足踏みしている時間が、そのまま長さとして出ていたのかなという気がします。
この尺を、描ききれていない部分のほうにもう少し回してほしかったです。襲撃者が何者なのか、疫病がどういうものだったのか、社会がどう壊れたのか。そこに少しでもフォーカスがあれば、同じ119分でも印象がかなり変わっていたかなと思いました。
まとめ
空から見下ろす山と自然の景色は雄大で、これは劇場で観てよかったと思えるものでした。生き残った人たちの人間ドラマも、世界がここまで壊れたあとの関わり方として、ちゃんと見られるものになっています。
ただ、その足場になっている世界そのものの説明が薄いままなので、良かったところをそのまま受け止めきれない感じが最後まで残りました。あの襲撃者たちは何だったのか、疫病はどういうものだったのか。分からないまま劇場を出ることになります。
説明しないことが狙いだったのか、それとも尺の都合で削られたのか。そこの判断が付かないまま考え続けているので、同じところが気になった人がいたらどう受け取ったのか聞いてみたいです。
作品情報
あらすじ
謎のパンデミックで人類の大半が死滅、生存者たちが奪い合い殺し合う狂気の世界。パイロットのヒッグ(ジェイコブ・エロルディ)は元軍人のバングリー(ジョシュ・ブローリン)と共同戦線を張ることで日々を生き延びていた。ヒッグの理性をつなぎとめていたのは、愛犬ジャスパーの存在と亡き妻の記憶だけだった。
そんなある日、小型機の無線に“謎の声”が届く。失われた日常を求め、その声に導かれるようにヒッグは未知の空へと飛び立つ。世界の終わりに、まだ希望は残されているのか――。魂を揺さぶるディストピア・サバイバル。
引用元:映画『ラスト・サバイバー』公式サイト
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