レビュー
よくわからない何かを、よくわからないままに見せてくる
ひたすらに不可思議を詰め込んだような作品でした。どこまでも続く黄色い壁紙の部屋に、終わりのない廊下。不自然な間取りと、意味を失って床に埋まった設置物。公式サイトで紹介されている通りの空間が、そのまま2時間ぶん目の前に広がっていきます。
面白いのは、その空間が何なのかを本作がほとんど説明しないところです。題材が題材なので当たり前といえば当たり前なのですが、こういう仕組みでこうなっている、という詳細な説明が親切に用意されているタイプではありません。
空間そのものの作り込みは、ライティングだったり大道具小道具だったり、絵作りといえば絵作りの成果ではあります。ただ、それもバックルームという空間の設定に忠実といえば忠実で、そういうものなのかもしれないなという気もしています。
そして、その「わからない」の中に底知れぬ怖さがあります。何が起きているのか説明されないので、こちらは想像で埋めるしかない。それでも埋まらないので、ずっと落ち着かないまま座り続けることになります。個人的には、この居心地の悪さが本作のいちばんの持ち味だなと思いました。
怖がらせにいくというより、不可思議に振り切っている
洋画ホラーというと、どうしてもバイオレンス寄りでジャンプスケア多めという印象があります。急に大きな音が鳴って何かが飛び出してくる、あの手のやつです。本作にもまったく無いわけではないのですが、数としてはかなり少なめで、洋画ホラーとしては比較的優しめに感じました。
というのも、本作は怖さよりも不可思議のほうに振った作品だからだと思います。驚かせて怖がらせるのではなく、わからないものをわからないまま置いていくことで、じわじわ落ち着かなくさせてくる。怖さの出どころがそもそも違うところにあります。
似た感触で浮かんだのが、同じA24の『ボーはおそれている』でした。A24系にはちょいちょいこの手の不可思議さを持った作品がある気がしていて、その中でも近いのはボーかなと。ただ、不可思議さの度合いでいえばボーのほうがずっと上で、本作はもう少し輪郭のあるほうだと思います。
そういうところなので、ジャンプスケアが苦手で洋画ホラーから距離を置いている人でも、本作は比較的入りやすいんじゃないかなと思います! 怖くないわけではないのですが、驚かされ続けて疲れる、という種類の怖さではありません。
ゲームや動画のバックルームから入ると、どう映るのか
観ていて気になったのが、バックルームというものをどこから知ったかで、本作の見え方がかなり変わりそうだな、というところでした。
個人的にはゲームはやったことがなくて、動画で見たことがある程度です。本当の原作は都市伝説系のようですが、実際のところ、ゲームや動画から知ったという人のほうが多いんじゃないかなと思っています。
そう考えると、ゲームや動画のバックルームをがっつり通ってきた人からすると、物足りなさを感じる要素があるのかもしれないな、と想像したりもしました。あくまで動画で見た程度の立場からの想像なので、実際のところはわからないのですが。
吹き替えのスタッフロールが終わった、その後に
本作は吹き替えで観たのですが、本編が始まる直前に、エンドロールの後にも映像がありますという案内が入りました。
実際に観ていると、その映像は日本語版のスタッフロールが終わった後に差し込まれていました。大体の吹き替えだと、ポストクレジットの映像があってから吹き替え声優のクレジットが流れる印象なので、ここが逆になっている形です。
そしてこれが思っていた以上に長くて、尺があるぶん、スタッフロールを挟まずにそのまま現実へ戻される感じになります。ここがすごいなと思いました。
なので、本作を観る時は最後まで席を立たずにいてもらえたらなと思います! 特に吹き替えの場合、いつもの感覚でスタッフロールが流れ始めたら席を立つ、をやってしまうと取りこぼします。
まとめ
よくわからない何かを、よくわからないままに見せてくる作品として、比較的満足度の高い1本でした。
説明を尽くしてくれるタイプではないので、細かいところまで腑に落ちる感覚を求めて観ると、たぶん求めているものとは違うと思います。ただ、わからないものをわからないまま見せられるからこそ、あの黄色い空間が頭に残るのかなとも思いました。
人間はわからないものに対して一定の恐怖を抱くのかもしれない。観ながら考えていたのはそんなことでした。仕組みがわかってしまえば大したことのないものが、わからないというだけでこんなに落ち着かなくなるのは、なんなんでしょうね。
作品情報
あらすじ
舞台は、都市伝説とされていた空間“Backrooms”。
「ある日突然 “現実世界の裏側”へ墜ちてしまったら…?」どこまでも続く黄色い壁紙の部屋、終わりのない廊下。不自然な間取りと、意味を失い床に埋まった設置物。
わずかに現実からズレている――そんな出口のない“リミナルスペース”で、観客は“最高密度の不安と恐怖”を体験する。
引用元:バックルームズ|FILMS|A24×Happinet Phantom Studios
トレーラー
This product uses the TMDB API but is not endorsed or certified by TMDB.




