【レビュー】雪の花 ―ともに在りて―

雪の花 ―ともに在りて―
引用元:映画『雪の花 ―ともに在りて―』公式(公式X)

レビュー

死に至る病、疱瘡(天然痘)から日本を救った町医者

疱瘡(天然痘)とは、高熱と全身の発疹が主な症状とされ、悪化すると呼吸器系にも影響が及び、やがて死に至る(致死率20〜50%)と言われていた病気のことだそうです。

治癒しても失明を引き起こす可能性があるとかで、当時は患ってしまったら治療法がないものとされていました。

そんな疱瘡(天然痘)に苦しむ患者を助けることもできず、無力さを嘆いていた福井藩の町医者で漢方医の笠原良策が種痘(予防接種)を学び広めていくという物語です。

当時の医療は漢方が主流

舞台となっているのは江戸時代末期、ざっくり1850年前後となっており、当時の医療はもっぱら漢方を用いたものだったようです。

鎖国により外国との関わりを絶っていた日本にも、一部では蘭学(西洋医学)を扱う医者がいたようですが、基本異端者のような扱いをされており、松坂桃李演じる本作の主人公である笠原良策もこの扱いに苦しむことになります。

元々漢方医だった笠原良策が持つ知識では、疱瘡(天然痘)に対する処置ができなかったところに現れたのが、Dr.コトーでお馴染みの吉岡秀隆が演じる蘭方医。

松坂桃李と吉岡秀隆のツーショットはなかなかに豪華で、なにより医療の話でこのタイミングで吉岡秀隆を起用ってグッジョブすぎる!って思いながら見ていました。

新しい知識への探究

疱瘡(天然痘)を治療したいことがメインの目的となっていた笠原良策なのですが、いざ蘭学を学ぶとなったときの目にキラキラ感。

夢中になって学問書を読み漁って楽しそうに学ぶ姿は、まさに天職に従事していることが見て取れるほどでした。

多くの医者が蘭学など異端だというような風潮の中、ここまで「おもしろい!」と知識を探究できる姿は、現代社会においても見習うべき姿勢だと感じさせられました。

まとめ

疱瘡(天然痘)を予防するために、ものすごい苦労があったことが描かれており、現代医療において予防接種が誰でも受けられる仕組みを作った笠原良策の功労は計り知れないと思わせる映画でした。

最初は地方ローカル系の映画かと思っていたのですが、松坂桃李をはじめとする豪華俳優陣で、そんなチャチな作品ではないと思い実際に鑑賞してみたところ、期待以上に満足度の高い出来栄えだったと思います。


作品情報

あらすじ

江戸時代末期。死に至る病として恐れられていた疱瘡(天然痘)が猛威を振るい、多くの人命を奪っていた。

福井藩の町医者で漢方医の笠原良策(松坂桃李)は、患者を救いたくとも何もすることができない自分に無力感を抱いていた。自らを責め、落ち込む良策を、妻の千穂(芳根京子)は明るく励まし続ける。

どうにかして人々を救う方法を見つけようとする良策は、京都の蘭方医・日野鼎哉(役所広司)の教えを請うことに。鼎哉の塾で疱瘡の治療法を探し求めていたある日、異国では種痘(予防接種)という方法があると知るが、そのためには「種痘の苗」を海外から取り寄せる必要があり、幕府の許可も必要。

実現は極めて困難だが、絶対に諦めない良策の志はやがて、藩、そして幕府をも巻き込んでいく─。

引用元:映画『雪の花 ―ともに在りて―』大ヒット上映中(公式サイト)

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