引用元:映画『スオミの話をしよう』公式 大ヒット上映中!(公式X)
レビュー
三谷幸喜版怪人二十面相?
本作で物語の中心となる人物となるスオミは現在を含む5人の男性と結婚経歴があります。
劇中でスオミの年齢については触れられていませんが、旦那5人ってどんな人生歩んできたんだ…!っていう衝撃もありますが、現在もなおその5人の旦那たちと友好的な関係を保ちつつ、それを一箇所に集めさせてしまうというのがなかなかにぶっ飛び設定すぎて予告で見た時の引きがめちゃめちゃ強かったのを覚えてます。
そして、その旦那たち一人一人が知るスオミの性格はことごとく食い違っていて、さながら怪人二十面相か多重人格のようにすら感じてしまいます。
スオミと十人十色な旦那たちのやりとりを見ていると、どこか他人事ではないように見えてくるのが不思議で、「実際こういう人いるよな。」「そういう言い方はちょっとやだな。」などなど自分はこんな感じになっていないか?と考えさせられてしまう説得力がどこかにあったように感じました。
スオミという人物はいったい何者なのか?そもそも同一人物なのか?という疑問から、どんどんとその原因が紐解かれていく様は見どころです。
三谷幸喜節が炸裂したコメディドラマ
三谷幸喜監督の映画といえば「THE 有頂天ホテル」「ザ・マジックアワー」「記憶にございません!」など、ちゃんとヒューマンドラマな風に見せておいて、どこかはちゃめちゃな設定や展開で劇場内に笑いをもたらしてくれるコメディ映画が特徴的です。
コメディの作風的には、漫才やコントのような笑わせにかかる笑いというよりも、ドラマを演じつつ生じるシュールな笑いがメインかと思います。
本作も例に漏れず、次々と現れスオミの話をする旦那たち・スオミを探す過程・スオミの正体がわかってからなどなど、随所に笑いどころが用意されていて、劇場内はそこかしこで笑いが漏れていました。
豪華な俳優陣
中心人物のスオミを演じる長澤まさみの演技力がなければここまでの作品には仕上がらなかったと思えるほどのキャスティング。スオミの母役としても長澤まさみが演じる必要があったのか?という点はそのキャスティングも含めてコメディにしてしまう三谷幸喜らしさを感じます。
他にも遠藤憲一や西島秀俊の安定したキャラクター感、若い世代でも松坂桃李や瀬戸康史といった実力派もちらほら。
ただの特撮好きからするとどうしてもこの4人に目がいってしまって、謎に安心感と親近感を感じてしまいました。(戸塚純喜も特撮出演者でしたが、すぐ浮かんでこず終わった後に検索して既視感の正体を知りました。)
個人的に小林隆・坂東彌十郎・宮沢エマは初めましてで、特に坂東彌十郎が演じる現在の旦那としてのキャラクター性から鼻につく演技が印象的で、普段どんな人なのかと調べると歌舞伎界の人というところでまたびっくり。歌舞伎のことは詳しくないのでわからないですが、歌舞伎も演技であるとはいえ歌舞伎役者ってここまで映画・ドラマ向きな演技ができるものなのかと歌舞伎に対する印象も変わりました。
まとめ
三谷幸喜監督の映画としては「記憶にございません!」から5年ぶりらしく、あまり三谷幸喜映画に触れてこなかったのでかなり新鮮な気持ちで見ることができました。
ただ、ところどころ設定や展開に無理があるなと思わせる部分が何箇所かあり、細かいところを突き詰めると三谷幸喜の良さが無くなるとも思えたので、肩の力を抜いて大スケールのシュールコントを見るような気持ちで笑いにいくくらいの心構えで鑑賞するのがおすすめです。
作品情報
あらすじ
その日、刑事が訪れたのは著名な詩人の豪邸。
《スオミ》が機能から行方不明だという。
スオミとは詩人の妻で、そして刑事の元妻。刑事は、すぐに正式な操作を開始すべきだと主張するが
詩人は「大事にするな」と言って聞かない。
やがて屋敷にゾクゾクと集まってくる、スオミの過去を知る男たち。誰が一番スオミを愛していたのか。誰が一番スオミに愛されていたのか。
スオミの安否そっちのけで、男たちは熱く語り合う。だが不思議なことに、
彼らの思い出の中のスオミは、見た目も、性格も、まるで別人…。スオミはどこへ消えたのか。スオミとは一体、何者なのか。
この秋、三谷幸喜真骨頂!極上ミステリー・コメディの幕が上がる─!
引用元:映画『スオミの話をしよう』公式サイト