【レビュー】火喰鳥を、喰う

火喰鳥を、喰う
引用元:映画『火喰鳥を、喰う』10.3(金)公開(公式X)

レビュー

個性的すぎるキャラクター

まず真っ先に語りたくなるのは、超常現象専門家の北斗総一郎を演じる宮舘涼太さんの存在感は圧倒的でした。
彼の芝居は誇張ぎみに見え、気がついたら北斗総一郎を中心に物語が進んでいくような感覚を覚えるほどでした。

水上恒司さん演じる雄司と山下美月さん演じる夕里子も、日常と怪異の狭間で揺れる人間らしさが丁寧に描かれています。夫婦の静かな幸せが、不可解な出来事をきっかけにじわじわと崩れていくプロセスは、どこか現実の不安と地続きのように感じられました。

もう一つの現実とは

序盤では、戦死した先祖・久喜貞市の日記が持ち込まれることから、物語は静かに動き出します。その日から始まる奇妙な現象は、最初は偶然や思い込みに見えるものの、徐々に「この世界そのものが何かおかしいのではないか」という疑念を観る者に植え付けます。

本作が巧いのは、恐怖や超常的な要素を過剰に煽らず、「現実とは何か」をじっくりと問いかける点です。
まるで“もう一つの現実”が少しずつ侵食してくるような映像演出も印象的で、観ている側も感覚が狂っていくような錯覚を覚えます。

火喰鳥とはなんなのか

タイトルにもある「火喰鳥」という存在は、物語を象徴するキーワードでありながら、その正体は最後まで明確には語られません。

姿を直接映し出すシーンは多くないにもかかわらず、登場人物たちに与える影響は計り知れず、それ自体が“恐怖のメタファー”のように機能しています。

まとめ

何でもかんでも説明してくれる映画ではありませんが、だからこそ「火喰鳥とはなんなのか」「このあとどのような展開が待っているのか」といつまでも考え続けてしまうような、深い余韻が残ります。

ぜひ、前情報を入れずにまっさらな状態で、この不思議な体験を楽しんでみてください。


作品情報

あらすじ

全ては死者の日記から始まった。
死した者、生きる者 其々の「執着」の行き着く先は?

信州で暮らす久喜雄司(水上恒司)と妻の夕里子(山下美月)はある日、一家代々の墓石から、太平洋戦争で戦死した先祖・久喜貞市(小野塚勇人)の名が削られていることを知る。

時を同じくして、地元紙「信州タイムス」の記者・与沢一香(森田望智)とカメラマン・玄田誠(カトウシンスケ)が、生前の貞市が戦地ニューギニア島で書いたという日記を携え久喜家を訪れる。その日記に綴られていたのは、戦地での壮絶な日々と、何としてでも生きようとする貞市の異様なまでの執念だった。その気にやられたのか、玄田が突如「久喜貞市は生きている」と呟き、さらに夕里子の弟・亮(豊田裕大)が日記に「ヒクイドリヲ クウ ビミナリ」と書き込む。二人の常軌を逸した行動に戸惑う雄司たち。

そしてこの日を境に、玄田が正気を失い倒れ、雄司の祖父、保(吉澤健)が姿を消すなど彼らの周囲で不可解な事件が頻発するようになる。

事態の真相を探るべく、雄司らは夕里子の知人で超常現象専門家の北斗総一郎(宮舘涼太)の力を借りることに。顔を合わせるや、雄司を値踏みし、「夕里子とそぐわない」と挑発する態度をとる北斗に戸惑う雄司。

北斗が言うには、玄田の「久喜貞市は生きている」という言葉がトリガーとなって、自分たちが今いる現実とは別の、久喜貞市が死ななかった新たな現実が生み出されてしまったのだという。北斗の言葉を裏付けるように、貞市の生への執着が現実を侵食し、雄司らの現実は徐々に、しかし確実に変容していく――。

引用元:ABOUT | 映画『火喰鳥を、喰う』公式サイト

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