【レビュー】八犬伝

八犬伝
引用元:映画『八犬伝』公式|10/25(金)劇場公開(公式X)

レビュー

日本最古のフィクション八犬伝

本作「八犬伝」は、実際に日本に実在している「南総里見八犬伝」そのものの内容と、著者の曲亭馬琴が28年間もの期間をかけて八犬伝を著作する際の出来事や苦悩などを交互に描いた、「実(話)をベースにした虚(フィクション)」という新しい切り口のジャンルの作品になります。

作中の中でも「実」と「虚」というワードはかなり重要なキーワードとなっており、登場する人物もこのキーワードに対して苦悩していく姿が描かれています。

実話をベースにした著作パート

八犬伝を著作するために、28年もの歳月が経過しています。

そのためトレーラーを見てもらえるとわかるかもしれませんが、物語が進行するにつれて著作者の曲亭馬琴をはじめとする、葛飾北斎などの登場人物もだんだんと老いていき、身近な人物との別れや失明といった事件が曲亭馬琴を襲います。

八犬伝の著作に夢中になる曲亭馬琴と葛飾北斎を尻目に、それを支える奥さんや息子夫婦のリアルな家庭内事情は、現代でもクリエイティブな仕事を志す方は一度は通るのではないかと思うような風景となっています。

さらに同時期に著作されていた東海道四谷怪談についても劇中では触れられており、実際の歌舞伎役者である中村獅童をはじめとする役者陣が演じる東海道四谷怪談が劇中劇として見られるというのも一つ見どころです。

八犬伝と東海道四谷怪談は同じ「虚(フィクション)」でありながらも作風や表現の仕方が真逆で、作者同士の思想がぶつかり合うシーンはなにか考えさせられるような感覚がありました。

八犬伝パート

著作パートだけでなく、八犬伝の内容そのものも豪華な俳優陣とともに映像化されています。

八犬伝そのものの内容は全く知らずな状態で鑑賞することになったのですが、現代風にアレンジが効いているのかいないのか、普通に王道系ファンタジーバトル漫画のような感覚で楽しむことができました。

劇中の時代が時代だけに、鬼滅の刃のような世界観があり、仮にこのまま八犬伝をベースにアニメ化などされたとしても結構流行るんじゃないか?とさえ思わされました。

八犬伝パートに出演する俳優陣も、板垣李光人・土屋太鳳・栗山千明などなど豪華なメンバーで構成されており、特に個人的な推しとしては、王様戦隊キングオージャーでカグラギ・ディボウスキ / ハチオージャー 役を演じていた佳久創が、再び武士の役を演じているのが似合いすぎていて、もうこのまま大河俳優になってほしいと思うほどでした。

まとめ

八犬伝と言われると、どこかでそんな名前を聞いたことあるなーくらいの感覚で気になりはじた程度でした。

それがどんなもんかと最初はハードルを低く構えていたのですが、上映時間も約150分と想像以上にボリューミーで、著作パートと八犬伝パートの両方が描かれることによる1度で2度美味しいという表現がピッタリな作品でした。

その気になれば著作パート・八犬伝パートでそれぞれ独立しても映画にできたと思います。しかしそれをあえて両方同時に描いたというところに良さもあり、当初想定していたよりも満足度の高い作品に出会えたと思えたので、もっと話題に上がってたくさんの人に見てもらいたいなと思いました。


作品情報

あらすじ

なぜ彼は、失明しても諦めなかったのか?
「八犬伝」に込めた馬琴の想いにあなたは涙する。

江戸時代の人気作家・滝沢馬琴は、友人の絵師・葛飾北斎に、構想中の物語「八犬伝」を語り始める。
里見家にかけられた呪いを解くため、八つの珠を持つ八人の剣士が、運命に導かれるように集結し、
壮絶な戦いに挑むという壮大にして奇怪な物語だ。北斎はたちまち夢中になる。
そして、続きが気になり、度々訪れては馬琴の創作の刺激となる下絵を描いた。
北斎も魅了した物語は人気を集め、異例の長期連載へと突入していくが、クライマックスに差しかかった時、
馬琴は失明してしまう。完成が絶望的な中、義理の娘から「手伝わせてほしい」と申し出を受ける──。
失明してもなお28年の歳月をかけて書き続けた馬琴が「八犬伝」に込めた想いとはー。

引用元:映画『八犬伝』公式サイト|2024年10月25日劇場公開

トレーラー