【レビュー】ふれる。

ふれる。
引用元:映画『ふれる。』(公式X)

レビュー

心揺さぶる友情物語

本作「ふれる。」は「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」「空の青さを知る人よ」を手掛けた長井龍雪(監督)・岡田麿里(脚本)・田中将賀(キャラクターデザイン・総作画監督)が送る友情物語です。

テーマはズバリ「友情」。「ふれる」という謎の生物が持つ「触れると互いの心の声が聴こえる」という不思議な力を使って幼少期から友情を築き上げてきた三人の青年が上京し共同生活を送り始めるというあらすじです。

東京での新生活で新しく出会う人々や、島から連れてきた不思議生物「ふれる」と生活していく日常の中で起きる出来事をきっかけに物語が動いていくのですが、「ふれる」の力を使って培ってきた友情は本物と言えるのだろうか?と深く考えさせられました。

仮初・表面上だけの友情というような表現を見かけることはありますが、本作はそれらとはちょっと毛色が違っていて、互いの心の声が聴こえるという能力から腹黒い考えがあることを前提としないため、「ふれる」の不思議な能力を使っているため繋がっているとも言えるし、腹の底から相手の気持ちがわかっているという真の友情のようにも見える、そんな普通の友情でも裏のある友情でもない、ちょっと歪な強い友情というところが設定として斬新に感じます。

「友情」といわれて連想する作品に「リトルバスターズ!」の存在は欠かせないと思ってしまうのですが、「リトルバスターズ!」は友情・絆を深め合っていく物語だとするならば、本作「ふれる。」は友情・絆を確かめる物語といった感じでしょうか。今思い返すと、この「確かめる」をするために、幼少期から青年期への時間軸の移動は必須な表現だったんだなと感じます。

3人の主人公

本作の主人公は小野田 秋(CV永瀬 廉)・祖父江 諒(CV坂東龍汰)・井ノ原 優太(CV前田拳太郎)の3人ですが、それぞれの声を担当するキャスト陣がなかなかにバラエティ豊か。

それぞれ活動の領域としては俳優業として分類される場での活躍が多く、声優としての経験はあまり多くないように感じました。(前田拳太郎はまだ仮面ライダーリバイスとしてアフレコ経験が豊富だったかな?くらい)

そのため、多少演技が固く感じられる場面も見受けられたのですが、次第に馴染んで気にならずに最後まで見終えることができたかなと思います。

キャスト陣それぞれにファン層が異なりそうなので、話題作りとしてのキャスティングとアニメ・声優としての実力の良し悪しについては意見が別れそうではあります。

3人のキャラクター設定としては3人とも個性的で、一見考え方や普段の言動も結構違うように感じます。

特に3人の中で本作の中心人物として描かれる小野田 秋はコミュニケーションが苦手で先に手が出てしまうようなわかりやすいコミュ障。それが「ふれる」の不思議な能力をつかって友情を築き上げてきた青年時代ではすっかり好青年に。

その中でも推したいポイントが、小野田 秋がほぼ趣味?のように作っている料理がめっちゃ美味そうで美味そうで。小野田 秋が作った料理のレシピをまとめた料理本がグッズにあったらつい買ってしまうんじゃないかと思えるほどでした。

まとめ

本作のテーマは「友情」というところで、露骨に泣かせにくるというような場面もさほどないのですが、「人と人のコミュニケーションのあるべき姿はこうだよね」っていうメッセージ性を強く感じました。

現実に「ふれる」がいたらどうなるのだろうか?そんなことを考えながら本作を見ていると、自然と「友情とは」について考えさせられていることに気づきました。

ちょっぴり新しい感覚の友情物語、ぜひ一度ご鑑賞ください!


作品情報

あらすじ

同じ島で育った幼馴染、優太
東京・高田馬場で共同生活を始めた三人は
20歳になった現在でも親友同士。
それは島から連れてきた不思議な生き物「ふれる」が持つ
テレパシーにも似た力で
趣味も性格も違う彼らを結び付けていたからだ。

お互いの身体に触れ合えば心の声が聴こえてくる-
それは誰にも知られていない三人だけの秘密。
しかし、ある事件がきっかけとなり、秋、諒、優太は、
「ふれる」の力を通じて伝えたはずの心の声が聴こえないことに気づく。

「ふれる」に隠されたもう一つの力
徐々に明らかになるにつれ、
三人の友情は大きく揺れ動いていく-

引用元:映画『ふれる。』公式サイト

トレーラー