引用元:映画『フロントライン』公式(公式X)
レビュー
新型コロナウイルスを食い止める最前線
本作は、まだ日本で新型コロナウイルス感染者が確認されたと報道されていなかった最中、乗客に新型コロナウイルス陽性者が確認され、乗客の命を助けること、且つ日本国内にウイルスを持ち込まないことを使命に奮闘した、水際対策の最前線にいた人たちの、事実に基づく物語です。
今となってはウイルスの変異・進化およびワクチン接種にともなって、インフルエンザと同等の5類感染症となった新型コロナウイルスですが、初期のころは重症化率および致死率が高く、本作の時系列ではワクチンもできておらずの状態で、かなり恐れられていた状態でした。
そんな中、本来地震などの自然災害のために組織された医療団体のDMATが、日本国内にウイルスを持ち込まないことに意識が向けられていた厚労省や世論に対して、乗客の命を最優先に動くという方針で戦っていくという姿を描いています。
当時の世論側としては、重症率・致死率の高いウイルスを国内に持ち込むなんてもってのほかで、感染力が無くなるまで隔離すれば良いと考える人が多かったように思います。
それに対して最前線の現場では乗客に十分な治療を受けさせるために、たくさんの人が動いていました。特に当時報道ではあまり触れられていなかったと記憶していますが、感染者では無くても糖尿病の患者の薬が足りなくなるなどの問題が発生していて、現場でしかわからない事実がたくさんあったという様子を描いています。
誰でも発信ができる世の中
現在は誰しもが簡単にSNSやYoutubeなどを活用することによって発信することができる世の中になっています。
新型コロナウイルスが日本国内に流行するようになったときにも社会的問題になったのですが、感染者や医療従事者に対する偏見や差別が本作の時系列の頃からあったようです。
その問題に対して現場がどのような煽りを受けたのかというのは本作を見ていただきたいのですが、改めて発信をすることによる影響力というものを考えさせられました。
特に本作の時系列では新型コロナウイルスに関する情報が主に報道によって得られていたことが多かったように記憶しているので、何かを発信するよりも可能な限り自分で真実の情報を調べるということがいかに重要なのかというのを感じさせられました。
良くも悪くも誰でも発信ができる世の中なので、結果的に攻撃となってしまう発信も簡単にできてしまうし、逆に真実を世間に届けることもできるというこを忘れてはいけないなと感じました。
まとめ
当時では現場でこのような葛藤があったとは思いもしませんでした。
新型コロナウイルスが5類感染症となった今だからこそ制作できた作品なのかもしれませんが、可能であればもっと早く公開されていれば、新型コロナウイルスに対する意識も変わってきたのかなと思いました。
作品情報
ストーリー
絶望も、希望も、その船の上にはあった。
未知のウイルスに最前線で立ち向かったのは、我々と同じ日常を持ちながらも、
眼の前の「命」を救うことを最優先にした人々だった。
船外から全体を指揮するDMAT指揮官・結城(小栗旬)と厚労省の立松(松坂桃李)、
船内に乗り込んだ医師の仙道(窪塚洋介)と真田(池松壮亮)、
そして羽鳥(森七菜)をはじめとした船内クルーと乗客たち。
TV局の記者・上野(桜井ユキ)らマスコミの加熱報道が世論を煽る中、
明日さえわからない絶望の船内で、彼らは誰1人としてあきらめなかった。全員が下船し、かけがえのない日常を取り戻すために――。未知のウイルスに最前線で挑んだ人々《事実に基づく》圧巻の感動ドラマ