引用元:映画『ドールハウス』公式(公式X)
レビュー
精神疾患と心霊現象の板挟み
本作は映画のタイトルにもある通り、人形(ドール)系のホラー映画になっています。
個人的に人形系のホラーは、人形そのものの不気味さ・怖さは当然として、その人形を「どういった経緯で手に入れるのか」「なぜ容易に手放せないのか」という設定も大事だなと感じています。
本作の大筋としては、自身の不注意から5歳の娘を亡くしてしまい、セラピーに通うほどの精神的ダメージを負ってしまった主人公が骨董市で見つけた人形を購入し、亡くした娘の身代わりとして可愛がるという設定から恐怖の体験がスタートしていきます。
この「骨董市で人形を見つける」というプロセスはちょっと無理があるだろうと思わなくも無い展開なのですが、思い返してみると、心霊現象として良く言われる「呼ばれた」という状態を多少大袈裟に表現したものかと思うと合点が行きます。
そして人形系ホラーあるあるなのが、「なぜ捨てられないのか」という観点。
そもそもこの人形の移動手段が、取り憑いた人間に運ばせるという手段を基本としているようで、ゲスト出演のエスポワールや俳優として映画・ドラマやTVCMなどでよく見る元キングオブコメディの今野浩喜など、主人公以外で関わろうとする人間に取り憑いて主人公の家に戻ってきます。
捨てられないのであれば壊してしまえば良いと思わなくも無いのですが、これがぬいぐるみとかならまだしも、お焚き上げという文化、そしてこの人形自身が日本人形であるという設定から、容易に壊すという発想にならない日本人特有の文化的制約で、壊すという行動を制限しているのがよくできているなと感心しました。
新たな和風ホラーアイコン
日本では「ホラーといえばこのキャラクター!」といわれるホラーアイコンは「貞子」や「伽耶子」などの有名所はぱっと出てくると思うのですが、意外と新しい日本のホラーアイコンは登場していないイメージでした。
日本のホラー文化といえば、背筋が凍る心霊が一般的ですが、そのサブカテゴリーとして日本人形を初めとする人形や玩具に対するホラーは、映画やドラマだけでなく日常にも根付いていると思います。
そう考えると、意外と日本人形という設定のホラーアイコンは今まで居そうで居なかったなと思いました。
人形系ホラーで言えば「チャッキー」や「アナベル」、最近だと「ミーガン」など洋画ではたくさんのホラーアイコンを生み出してきたジャンルなので、本作に登場してきた人形も、これからシリーズ化・ホラーアイコン化していってもおかしく無いなと感じました。
まとめ
日本人形というありそうで無かった設定や、それに合わせて主人公の置かれている精神状態など、想像していたよりも逃げ場が無く、しっかり和風ホラーなテイストが強く出ていて、良い意味で裏切られたなと感じました。
昨今のブームなのかホラー映画がたくさん公開されていく中で、日本も負けていないぞ!という意気込みを強く感じさせられました。
どのような形で展開していくことになるのかはまだ想像できませんが、日本ホラー映画としてぜひ続編を作っていって欲しいなと思います!
作品情報
あらすじ
5歳の娘・芽衣を亡くした鈴木佳恵(長澤まさみ)と夫の忠彦(瀬戸康史)。
哀しみに暮れる佳恵は、骨董市で見つけた、芽衣によく似た愛らしい人形をかわいがり、
元気を取り戻してゆく。佳恵と忠彦の間に新たな娘・真衣が生まれると、2人は人形に心を向けなくなる。
やがて、5歳に成長した真衣が人形と遊ぶようになると、一家に変な出来事が次々と起きはじめる。
佳恵たちは人形を手放そうとするが、捨てても捨てても、
なぜかその人形は戻ってくる…… !人形に隠された秘密とは?そして解き明かされる衝撃の真実とは―― !?
引用元:映画『ドールハウス』