引用元:映画『ブルーピリオド』公式(公式X)
レビュー
実写でしか出せない美術品の質感
本作、「ブルーピリオド」は漫画が原作で、2021年にアニメの放映もされていました。
題材が「美術」で、油絵や水彩画などの多種多様な表現技法が登場する関係で、漫画やアニメでは「それっぽく見せる」ことはできても、その画材そのものが映し出されるわけではないため、どうしてもその作品の100%の良さというのを見ている人に伝えることは難しいんだろうなと感じていた作品でした。
それが実写化となれば、カメラを通して映し出される美術作品は、油絵だろうと水彩画だろうとデッサンだろうと、実際にそこにある美術作品そのものがそのまま鑑賞者に届けられるわけですよ。
序盤に主人公が描く青い渋谷の街並みの淡く溶け出しそうな水彩画の質感だったり、顕著に実力差がハッキリとみて取れるデッサンだったり、こんもり盛られた油絵の質感だったり。はたまたそれらを制作している時に発せられるキャンバスと画材が擦れ合う音など、美術作品そのものの良さを届けるメディアとしては実写が間違いなくダントツでしょう。
登場キャラクターとキャスト
次に驚いたのが登場キャラクターとそのキャストさんたちの演技です。
もちろん、各キャラクターの振る舞いやセリフの言い回しは原作ありきなので、先生方の説得力しかない言い回しは実写で見ても謙遜なく、心にグッときました。
演じているキャストさんたちの演技も違和感なく受け入れられ、各キャラクターの心情を表現した ”間” がすごく印象的でした。
特に役作りという面において、ユカちゃんを演じた高橋文哉、びっくりするくらい華奢な体型になっていて、めっちゃ女方が似合う!(でもちょっと心配なくらい細く見えたので、落ち着いたら腹筋崩壊太郎に鍛えてもらいましょうね!!)
映画という壁
本作のストーリーがアニメで1クールかけて映像化した大学受験編までということもあり、正直なところ全体的な出来でいえば「大味なブルーピリオド」という印象でした。
圧倒的な尺不足。これに尽きる。といった感じ。
原作やアニメではもっと細かく各キャラクターの心情を深掘りしていたし、主人公が初めて触れる美術・絵というものに対する葛藤や練習の日々など、もっともっとグサグサと心に伝わってくるものがあったように思います。
本作の実写化に無理があったというわけではないと思うのですが、2時間程度の尺に収めるためには泣く泣くカットせざるを得ないシーンや描写が多々。それが故に、映画のテンポは保たれるのですが、イマイチ入りきれないという方も出てきてしまうのではないかな?と思う程度に大味に感じました。惜しい。
「情熱は、武器だ。」がキャッチコピーとしてキービジュアルに書かれていますが、こと映画でいうと、「ルックバック」や「数分間のエールを」の方が、同じ美術系クリエイティブに関する映画という括りでみると、出来が良くメッセージ製が強かったように感じられます。
でもこれは原作の土壌がそれぞれ異なるというところにおける差かなとも思うので、決して本作の脚本が悪かったというわけではなく、限られた尺の中でよくここまで表現できるものに仕上げてくれたなと感じています。
まとめ
近年、漫画原作の実写映画化でコケるパターンはよくあるパターンとして知られることが多いですが、本作は編な原作改変などはなく、大味ながらもしっかりブルーピリオドの良さを表現できていると感じました。
なのでブルーピリオドが好きな方も、美術・クリエイティブ系が好きな方も一見の価値アリかと思います!
作品情報
あらすじ
生きてる実感が持てなかった。あの青い絵を描くまでは―これはからっぽだった俺が、初めて挑む物語。
ソツなく器用に生きてきた高校生・矢口八虎は、苦手な美術の授業の課題「私の好きな風景」に困っていた。悩んだ末に、一番好きな「明け方の青い渋谷」を描いてみた。その時、絵を通じて初めて本当の自分をさらけ出せたような気がした八虎は、美術に興味を持ちはじめ、どんどんのめりこんでいく。そして、国内最難関の美術大学への受験を決意するのだが…。
立ちはだかる才能あふれるライバル達。正解のない「アート」という大きな壁。経験も才能も持ってない自分はどう戦う!?
苦悩と挫折の果てに、八虎は【自分だけの色】で描くことができるのか。
引用元:ブルーピリオド – 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画