【レビュー】シビル・ウォー アメリカ最後の日

シビル・ウォー アメリカ最後の日
引用元:映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』公式(公式X)

レビュー

A24が送る衝撃の問題作

なんらかの理由でアメリカが分断され、内戦状態に陥ってしまった世界を舞台とするのが本作「シビル・ウォー アメリカ最後の日」。

タイムリーに今アメリカでは大統領選挙を目前に控えたこのタイミングでの公開はかなりの反響を呼んだようで、次期大統領候補の方々も鑑賞を希望していると記載があります。

戦争が題材の映画は数多くありますが、本作は現代のアメリカ情勢やロシア・ウクライナ戦争があるためか、他の戦争映画よりも臨場感・没入感・他人事ではないと思わせる感覚が一線を画します。

人の生命は尊く重たいものであるとして描かれ、教育されてくることが大半ですが、本作を見ていて感じたのは「命の軽さ」でした。戦争というのは昨日まで仲良くしていた隣人であっても、戦争という大義名分があればこうも簡単に人を殺める動機となってしまうのかと思うと背筋が凍ります。

特にトレーラーや各種記事・あらすじにも大見出しになっている「お前は、どの種類のアメリカ人だ?」という言葉は、分断されたアメリカにおいてどちらの側に属するか?を問うセリフなのですが、過去から現代にかけて人種差別問題に取り組んできたアメリカだからこそその言葉の重みがまた一段にも二段にも重くのしかかり、回答を間違えれば命がないという緊迫感から、本作屈指のトラウマシーンとして今後も映画史に語り継がれるのではないでしょうか。

戦争とジャーナリズム

一時期よくテレビに出演されていた渡部陽一さんで一躍有名になった「戦場カメラマン」というジャーナリストの存在。本作は戦争に赴き、どちらの軍に加担するわけでもなく、ただその場で起こる出来事を記録するという使命に燃えるジャーナリストたちが主人公です。

お金のためなのかプロ根性なのかはわかりませんが、本作に登場するジャーナリストたちはまさにすぐ目の前で銃撃戦が行われている戦地に赴き、その瞬間をカメラに収めます。

もちろん、その行為は死と隣り合わせの危険な行為なわけで、その姿を見させられる鑑賞者側としては、「頼むからそんな危ないところにいないで、もっと離れてくれ!」と手に汗を握らせることになります。

目の前でいとも簡単に人の生命が消えていく現場において、どのような感情でこの仕事を続けていくのか、どういった葛藤があるのかというのは想像を絶するものがあると感じさせられました。

ミリタリー好きにはたまらない音響・映像

打って変わって、本作ですごくポジティブな印象を受けたのが、戦争を題材にするが故に登場する銃火器・戦車・ヘリコプターなどのリアルさと、生で花火を見ている時のように振動すら感じる音響です。

シリアスで緊迫したシーンに突然発せられる一発の銃声は、映画の中を飛び出して映画館の中まで響き渡ります。

頭上を飛び交う戦闘ヘリコプターのプロペラ音や、ギャリギャリギャリと履帯(キャタピラ)を回して登場する戦車も見応え・聞き応え・迫力も満点です。

銃火器や戦車だけではなく、登場する軍人さんたちにも注目です。

建物を制圧するときのハンドサインからの姿勢を低くし丁寧なクリアリング、狙撃する際にはスポッターとスナイパーの2人でギリースーツを見に纏い敵の動きをジッと待つ姿、交渉か戦闘かを一瞬で判断し実行する決断力などなど、ミリタリーが好きな人にはたまらないシーンが盛りだくさんです。

まとめ

最初A24と知らずに見に行ったため、よくある戦争映画かなー程度の気持ちで本作を鑑賞することになりました。

蓋を開けてみたら最初にA24のロゴが見えたときには自分の中でただの戦争映画ではないと覚悟することができたので、A24独特なただのハッピーエンドでは終わらせてくれないというような感じに備えてみることはできたかなと思います。

見終わった感想として、緊迫感と恐さが強く残ったのですが、その「恐さ」というのは、人怖・心霊・シリアルキラー的な恐さとは全く異なっていて、まさしく「スリラー」というジャンルがしっくりきました。

この映画はいろいろと考えさせられることもありながら、この臨場感・没入感は絶対に劇場でしか味わえないので、上映期間中にぜひ映画館に足を運んで、IMAXやDolby上映で体験していただきたい、そんな作品です!


作品情報

あらすじ

「お前は、どの種類のアメリカ人だ?」

連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。「国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている——」。就任 “3期目”に突入した権威主義的な大統領はテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、14ヶ月一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへと向かう。だが戦場と化した旅路を行く中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていくー

引用元:映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』|大ヒット上映中

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